阿蘇の豊かな恵み ―――

菊池市は、熊本市から北東へ約30キロの位置にあり、世界最大級のカルデラを持つ阿蘇山の外輪山を背に、豊かな水と緑がもたらす豊饒の大地が広がっています。
  菊池市では、菊池渓谷を美しくする保護管理協議会の前田さんにご案内をお願いしました。

まずは菊池市について教えてください。
 「菊池市は、地域の大半を森林が占め、豊富な水が菊池川本流をはじめとして迫間川、河原川、合志川に流れており、肥沃な土地を形成しています。これらの豊かな自然を生かした農林業が基幹産業となっており、県内一の生産量を誇るシイタケの他、菊池米や七城メロン、旭志産の牛肉などは県内外へ出荷されています。  また近年においては、農林業だけでなく各地に工業団地を整備し、企業誘致にも力を入れ、ITやバイオなどの先端企業を中心に企業立地が進んでいます。」

菊池渓谷のほかにはどのような観光スポットがありますか。
「熊本市の奥座敷である名湯菊池温泉をはじめ、四季折々の花木が楽しめる観光花園や南北朝時代に栄えた菊池一族の史跡など観光資源に富んでいます」。

濃緑あふれる光景 ―――

それでは、森林浴の森日本100選に選定されている
菊池渓谷について教えてください。

「阿蘇くじゅう国立公園の特別地域にあたる菊池渓谷は天然の広葉樹や樹齢数百年の針葉樹で覆われ、その大部分が国有林となっており、九州森林管理局熊本森林管理署によって管理されています。昭和60年には当時の環境庁によって“日本の水源百選”に、また平成7年には林野庁によって“水源の森百選”にも選定されています。」

渓谷内には濃い緑色をした渓流が走り、
日本の滝百選に選定された滝もありますね。

「渓谷内を縫うように走る渓流は、阿蘇の外輪山を水源に、菊池川となって有明海に流れ込みます。渓流が濃い緑色をしているのは、高い透明度と銅が含まれている川底の石の反射によるものです。光の加減によっては瑠璃色にも変化します。渓流には大きな滝が三つあり、遊歩道の入り口側(下流)から黎明の滝、天狗滝、そして“日本の滝百選”の四十三万滝となっています。」

渓谷へ訪れる観光客の最近の動向はいかがでしょうか。
「昭和48年に菊池阿蘇スカイラインが開通してから菊池渓谷を訪れる観光客は、年々増加しており、平成18年度の4月から11月のシーズン期間には約32万人が訪れ、シーズンオフを含めれば年間約35万人を超えています。この中には、韓国や中国など海外からの観光客も含まれ、年々増加傾向にあります。」

恵みを分かち合うために

菊池渓谷を美しくする保護管理協議会での環境保全に対する取り組みを紹介してください。
 「渓谷内には高原性の草花の他、野鳥や動物など多くの種類が生息しています。たくさんの方々にこの素晴らしい自然を見ていただいて大変うれしく思っています。しかし、観光客の増加によってゴミ処理やトイレ清掃、駐車場や休憩所の管理、交通渋滞などの問題が出てきました。このため昭和52年以降は渓谷へお越しいただいた高校生以上の皆さんから清掃協力金として百円ずついただいています。集まった協力金は施設の維持管理や清掃、シャトルバスの運行など諸問題の対策に充てられ、美しい菊池渓谷が維持されています。」

 渓流に沿った遊歩道を歩いてみると、
安全対策のみ最小限の造作に止めて、
出来るだけ自然のままの状態を残されていますね。

  「そうですね。元々、水辺に降りられる階段状の箇所へ安全対策のために滑りにくいステップを作っているだけで、余計な構造物は設けていません。渓流の右岸側の遊歩道は、ほとんどが岩場で道幅も狭いため、作業車の乗り入れも出来ませんから資材の運搬から工作まで全て人力で行っています。」

 工作や補修にも清掃協力金が使われているのですか。
  「当然、協力金の範囲で行っていますが、森林管理署OBのベテランの方々の献身的な努力・労力で行われています。この他にも地元の方々がボランティアで行われています。誰よりも菊池渓谷を知っていて、この自然を愛してやまない方々です。」

 最後に、今後の菊池渓谷の取り組みについて教えてください。
「ハード面においては、バリアフリー化の計画を推進していきたいと思います。自然の状態に余計な造作を加えない従来どおりの方向性は重要ですが、上手に渓谷の景観と融和したバリアフリー施設を設ければ、多くの皆さんに森林浴や飛沫浴を体験する機会を提供できると思います。
  ソフト面では最近、森林浴や飛沫浴をしながら胡弓などのヒーリング音楽を聴くマイナスイオンコンサートを実施しています。紅葉時期の渓谷健康ハイキングなどと併せて、これらイベント関係の充実化を図っていきたいと思います。」

新緑や紅葉の豊かな彩りを楽しみ、渓流のせせらぎや野鳥のさえずりに耳を傾ける。
そんな贅沢な阿蘇の恵みが菊池渓谷にあります。

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日本の森・滝・渚全国協議会 会報
「百選賛美」創刊号

-編集・発行- 日本の森・滝・渚全国協議会
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日本の森・滝・渚全国協議会 事務局(山口県光市役所 環境政策課内)
TEL(0833)72-1400 FAX(0833)72-5943
-発行日- 
平成20年3月